友人から相談を受けたのでせっかくなので公開する。
SIというか、「受託で硬いシステムを作っている会社に属していて、あまり1からのシステム構築とかやったことがない」という状態から、イケてる(と思われる)会社や開発現場に移るためにどんな準備をしたか、ということを書いていく。ちなみに現在はNextremerにてエンジニアをしつつ、高知AIラボのリーダーとして、イケてるエンジニアリング環境を作るため、色々と試行錯誤をしている。スーパーエンジニアではないけど、今は満足したエンジニアリング生活をしているので、誰かの参考になると良いな。
注意
- 2012年付近での経験をもとに書いています。時代の違いによる周辺環境の変化についてフォローできているかどうかは保証しかねます。
- SIがイケていないと言っているのではありません。僕のいた現場が(開発現場としては)イケていないだけです。
- 何をもってイケているのか。よりお金が動いているのは当然SIじゃないか!という議論をここでするつもりはありません。割と僕、その考え方に共感しますが、相談内容にそって、エンジニア的視点から書きました。
はじめに
まずは前提条件から。抜け出さねば!!と思ったきっかけは以下のとおり。
- 豊田高専情報工学卒 + 1年間米国留学 ののち、2009年にシステム開発会社(前々職)に入社(21歳)
- 1年目,2年目と金融関連のプロジェクトに多数参画し、それなりにできるSE(自称)として勤務
- 2011年暮れ、会社をやめてWeb系ベンチャーに行った同期組と1年ぶりに再開し、自分の技術力の無さ、及び周辺環境のヤバさに気づく
- 2012年1月、レベルアップして環境を変えるための活動を開始
最初はなんとなく「バリバリのプログラマ」を目指してスタートしたのだけど、途中からは「ビジネスレイヤと技術レイヤの中間でいい顔をできるポジショニング」に方向転換している。当時考えていたことと、今思えばということとが錯綜しているので、読みづらくなること必至。
主にやったことは以下の3つ
- アンテナとポートフォリオの整備
- 技術力の向上(開発/設計/チームビルディング/スタートアップ)
- プレゼンスとコネクションの整備
上の二つは2012年(当時24歳)に自分でやばいと思ってやったこと。エンジニア/ITビジネス屋としての基礎力をつけるためにやった。三つめは、2013年に出会った師匠的な人と一緒に仕事して感じてやった。最終的には「ビジネスと技術のハイブリッド」という方向性を目指すことにはなったけど、二つ目の技術力向上でやったことの蓄積がなければ、薄っぺらい奴になっていたと思うので今の所全部大事だと思っている。
アンテナ : 情報収集能力
とりあえず、業界でイケてそうな奴らは何を見ていて、何を考えているのかを知りたかったので、著名なエンジニア(のちにビジネス屋)をTwitterでフォローした。「XX使って見た」とか「このイベント面白そう」とか「良記事!!」の情報を垂れ流してくれるので、とりあえず情報INPUTはこれだけでもいいくらい。最初は100人くらい。ココみたいなページが割とたくさんあるので参考にした。
特定のメディアとかをフォローする手ももちろんあるのだけど、自分で選ぶよりも、できる人たちがシェアしてるやつを掠め取った方が最初は効率が良い。その中でよく目にするようなメディアをピックアップしてフォローするのがオススメ。
即転職を意識、というよりも、必要あらばいつでも転職できるようにしておくため、自分が何者かを見てもらえる場所が必要だと考えた。内容はともかく、自ら情報発信をしているというマインドセットは加点になるはずだと考え、下記を始めた。
ブログ運用
当時、自分はサーバ運用を全くしたこともなかったので、さくらVPSを契約してワードプレスを入れて、ついでに自分のプロジェクト管理用にRedmineを入れて運用してみた。今では不要だけど、コードも管理したかったのでSVNとGitの環境整備もしてみた。これらの作業を通じて、ポートやらサービスやらパッケージやらビルドやらSSHやらその辺りをなんとなく理解した。のちの技術書行脚に向けてはかなり役にたったと思っている。とはいえ、その辺りの技術習得の目的がなければ、はてなとかQiita等々、既にあるものに乗れば良いと。
ブログの内容は、勉強のときにハマったことだったり、業務で「ORA-XXXXX」的なエラーにぶち当たってトラブルシュートしたり、「xxxxxの調べ方調べて見て」というオーダーに対して調べたことなどのまとめが中心。それなりにアクセスがつくとやる気が出る。(残念ながらさくらVPSのお金払い忘れて解約してしまい、もうブログは残っていない)。
ただし、技術ブログは自分の底を晒すことにもなるので、ある程度のレベルに達するまでは見習い感が結構でる。その時はわからないのだけど、結構出る。事実、半年前に当時のエントリを読んだ時には悶絶というか、単純に消したくなった(全部消えたのはワザとではない)。書くことを繰り返すという訓練はとても良いことなのだけど、転職においては短期的な成果は得にくい。短期での転職を考えている場合は、とりあえず書き始めて、今回はそれをアピールせずにゆっくり準備をするなどしても良いと思う(転職先で転職したいと思うことだってあるでしょう?)。
ちなみに こんなバカなこと もしてみたことがある。
優先度と書く順番が逆になってしまうけど、Github上での活動の方が今は大事かも。
まずは勉強の過程で作ったものなどはじゃんじゃんリポジトリにあげて公開してしまうのが良い。PCのdotfiles(設定ファイル)のgit管理とかをやってみるのも良い。現場では何らかの形でほぼ100%使うことになるので、使い方、UIなどに慣れておくという意味でも、きちんと使って見ることをお勧め。
技術力向上(開発/設計/チームビルディング/スタートアップ)
書籍を読んだ
今は動画や質問系サービスも盛り上がっているので前ほどの重要性はないとの見方が強いけども、なんだかんだで基礎力と語れる厚みを身につけるために本は読んでおいた方が良いと思っている。本当は読んだ書籍を列挙していきたいのだけれど、今出先なので方向性だけ列挙する。
注意 : 本当に時代の影響を強く受けるので注意。それから、相談してくれた人のことを考えながら書いているのでその辺りのバイアスはあるかな。デベロッパーでもSE的な感じでも、この辺りを知識として知っておいた方が良さそうだな〜と思うものをピックアップしたつもり
- 言語/設計/開発
- マーティン先生のリファクタリングに始まり、名著と呼ばれるものを中心に読み進める
- 言語としては当時の唯一の使用言語Javaと、個人的に暑いと思っていたRubyを中心に勉強
- 今だとSI以外に行くとすれば言語はPython,Ruby,node.js,php,JVM系となる気がする。
- 関数型に手を出しても良いけどまずは必須ではないと思う。
- 結城先生のJavaのデザインパターン本を写経したのは記憶にある懐かしい(一応知識としては必要だと思っている)
- ビジネス / マネジメント
- アジャイル/スクラムの基本(的な考え方)
- CIとかCDとか
- LEAN STARTUP的なプロダクトを育てようレイヤの本
- お堅いマネジメント的な本(ビジネス書も入る)
- 今だとインフラ/アーキテクチャ等々のトレンドとして、マイクロサービスアーキテクチャ/ docker / オーケストレーションツールあたりは知っておきたい
- 今だとDDD流行っているけど,,
それから、SIからの転職という意味では「チーム開発実践入門」は読んでみると良いかも。少し古いけど、このレベルでちゃんとやれてる開発現場はまだまだないし、SI現場だとなかなか想像つかないと思うので理想イメージ掴むためにも読んで見た方が良いかと。
一次情報へアクセスする癖をつけた
何か新しいツールや言語を試そうとする時、最初の方は日本語ドキュメントに頼ることになると思うけど、慣れてきたらインストールや環境構築は公式サイトに行って Get Started
の項を参考に行うことをオススメする。一次情報にアクセスできるということは圧倒的なアドバンテージ、というか一次情報にアクセスできないのは圧倒的なディスアドバンテージになるので、英語文書へのアレルギーをなくしておくのはビジネス屋としての生存戦略上必須だと思っている。
プレゼンスとコネクションの整備
かっこよいサブタイトルだけど、要するにIT勉強会にでました、という話。目的は社外にエンジニアの仲間を作りたかったから。深い情報はやっぱりF2Fでの雑談に限るので。(だから運営を手伝ったりとかも積極的にやった)
ジャンルは特定の技術だったり、アジャイルなんかの開発プロセスだったり、転職系、ワークスタイル系だったり、とにかく結構参加した。
おすすめとしては、無理目でもなるべく頑張って発表者になること。自分が発表しない勉強会の後の懇親会は辛い。自分から話しかけないといけないので緊張する。一方で発表者であると自分が何者かを全員にあらかじめ効かせた後なので割と色々な人が話しかけてくれる。
というわけで、こんな感じです。
- コミュ力に自信がある人 : IT勉強会に行く
- コミュ力に自信がない人 : IT勉強会で発表する
(コミュ力だけではなく、勉強会に参加する人間で一番学びを得ているのは発表者でもあるのでここはおすすめ)
付録 : 移ってから思ったこと
準備としてやったことはとりあえず生きているとおもう。実際に移ってみて大事だと思ったのは「カルチャーギャップを埋める」ということ。
仕事が降ってくる、というよりも社内で仕事をとりにいく、という考え方でないと振り回されることが多くて苦しいと思う。その代わり、割と自分で正しいと思うことができるし、何より周辺環境の変化に対応する力がついた。自分としては移ってよかったと思っている。(業態の違いと会社の規模が一緒に語られている感はあるけど、likely的な感じであっていると思う )
いま書きながら思ったことだけど、上記の3つの準備は「能動的に動く」という習慣をつけるのにも役に立ったのかなと思った。「自分のポートフォリオを作りたい」という意識でいろんなことを調べて色々なものを作って色々な人と話して色々な人と色々なものを作って、、大変だったけど「自分で何をするか決める」「自分でどうするか決める」という経験を積み重ねるのはすごく大事だと思う。周りを見て見ても、そういう活動をしている人の方が、環境変化にうまく適応できている気がする。
それから、 SIer時代の経験は決して無駄ではない ということ。成果物や仕事のやりかたは大きく違うけど、知識として知っておいた方が良いことは本当に沢山ある。「堅くやるならこうだけど、この案件の場合はこの方がいいな」的な判断は、そもそも「堅いやり方」を知らないとできない。なんだかんだでどんな開発現場にも社内外にお客さんがいる。一般的なやり方を知らないことと、知っていて違う選択をすることは大きく違う。SIer時代の経験は確実に生きていると今でも思う(というか最近"特に"そう思う)。
エンジニアとビジネス、Web系とSI系、時と場合によっていろんな帽子を組み合わせて戦える人材は、活躍の範囲がとても広くて重宝される。
とはいえ反対に、過去やってきたやり方に執着しすぎると、ギャップに対応できずに辛い。大事なのは、今いる場所と過去に居た場所と自分の居たい場所の、環境の違いをしっかりと認識して、アクションを選ぶことなのではないかと書きながら思った。このあたりは改めてちゃんと整理してエントリにした方が良いな。
おわりに
上記のとおり準備をしつつ、働きつつとやっていたら、機会に恵まれてフラフラここまで、という感じ。道中で大きな借りを作ってしまった方々も居て、現状その借りを返すために今いるところでまずはビッグになろうと言うのが現在のステータス。これから転職を考えている方に少しでも参考になればと思いますです。
とりあえず、早足だけどこんな感じ。Done is better than perfect なのでここで終わりにしよう。
ちゃんと推敲した記事はまたリライトします。
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スタートアップのカオス感はありますが、その中でちょっとでもイケてる開発現場になるよう、色々考えてやっています。
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